前回は、旅行に持って行くカメラは機動性が高いものが良いということを書きました。今回は実際にカメラを買うときのポイントを考えみたいと思います。
お店に行くと実にたくさんのデジカメが発売されているので、正直どれが良いのかわからないと思います。結論から言ってしまうと、以下の点を満たしている機種が良いと思います。
【ポイント】
(1)手ぶれ補正機能(光学式またはCCDシフト式)が付いているもの
※紛らわしい機能として「手ぶれ軽減」とか「ぶれ軽減」とかいう名称のものがありますので、必ず「光学式手ぶれ補正」か「CCDシフト式手ぶれ補正」と書かれていることを確認してください。不明なときには店員さんに聞きましょう。
(2)広角撮影ができるもの
(3)海外使用が主の場合には、電源が充電池のみではなく、乾電池使用ができるもの(専用/兼用問わず)
反対に以下の点はほとんど無視して構わない、気にする必要は全くないというメーカー側の「売り文句」です。
【無視して良い点】
(1)画素数
(2)いろいろ付いているよくわからない多機能
(3)ISO高感度
まずポイントの方から説明していきたいと思います。
「手ぶれ補正機能」というのは、カメラのシャッターを切るときに、カメラ自体が揺れてしまうことよって、写真がぶれぶれになってしまうのを軽減するための機能です。光学式ではレンズを、CCDシフト式ではカメラ内の記録面(映像素子)を、カメラの振動にあわせて動かしてブレを防ぎます。これによって、ブレのない、きちんと被写体の写った写真を撮ることができます。
しかし、あくまで「軽減する」機能であって、どんな状況でも完全にブレをなくす機能ではないので限界があります。どの程度まで軽減できるかは、カメラの持ち方や撮影の仕方によりますが、概ねシャッター速度で3段階程度の効果があります。3段階という表現はよくわからないと思いますが、夕方にフラッシュなしで撮影しても大丈夫かも、といった程度です。
具体的にこの機能の威力を見てみましょう。右の写真は広島の原爆ドームの夜景です。IXY900ISを使用して夜の20時半頃に撮影しました。三脚を使わない手持ち撮影で、露光時間(シャッター速度)はなんと10秒間です。しかしブレのない写真になっています。それに肉眼では見ることのできなかった星まで写っています。これが手ぶれ補正機能の効果です。※注意:手ぶれ補正機能だけでこの写真を撮影したわけではありませんので後述の文章もよく読んでください。
手ぶれ補正機能は、機能の力だけに頼るのではなく、他の様々なことに注意を払い、合わせ技にすることによって、このように絶大な効果を発揮します。
手ぶれは主に、(1)室内や夜間等の暗いところで撮影した、(2)撮影するときにカメラを揺らしてしまった、の2点で発生します。(1)はもともと暗いのでフラッシュを使ったり、別の工夫をするしかありません。ですので、まず(2)を徹底的に気をつけます。
カメラを片手で構えたり、しっかり固定しなかったり、慌てて撮影したりすると、シャッターを押したときにカメラ本体が揺れてしまいます。まず落ち着いて、カメラを両手でしっかりと固定し、静かにゆっくりとシャッターを切るようにしましょう。
しかし、それでもこの原爆ドームのように夜景や暗いときの写真では無理があります。本来は三脚を使って撮影すれば、手ぶれは完全に防げるのですが、旅行の時にわざわざ三脚を持って行くほど大変なことはありません。しかも観光地等では三脚そのものが周囲の邪魔にもなり迷惑です。また夜景はフラッシュを使用するときれいに撮影できません(これは意外と知られていませんが大事なことです。夜景の時にはフラッシュをOFFにしましょう)。そこで次のような工夫をします。
まず、カメラ自体を何か近くで利用できるものに固定することです。原爆ドームではちょうど写真手前の位置に手すりがありました。この写真ではカメラを手すりの上に乗せて、上から両手で力をかけて押しつけて撮影しています。つまり手すりと自分の体の間にカメラを挟み込んでいるわけです。これで三脚がなくてもカメラを長い時間動かないようにすることができるのです。
また、シャッターを自分で切るのではなく、セルフタイマーで切っています。セルフタイマーというと、自分を撮影するときに使用すると思いがちですが、こういう時にも使えます。シャッターを自分の指で押すと、その瞬間必ずカメラは揺れます。普通の撮影なら(手ぶれ補正が効いて)問題ありませんが、夜景等で露光時間が長くなると(この写真では10秒間)ぶれてしまいます。セルフタイマーはカメラがシャッターを切ってくれますのでカメラ自体は揺れません。
ただ、それでも実際にはごくわずかに揺れます。ここで手ぶれ補正の威力が発揮されるのです。その微細な揺れを軽減できると、ポケットに入るカメラひとつでここまで撮影できる被写体が広がります。一眼レフと三脚がなくては撮れなかった写真が、こうして実際に撮影できるのですから、この技術の進歩を利用しない手はありません。
次は(2)の広角撮影についてです。広角は望遠の反対で、同じ位置で撮影したときにより広い範囲を写すことを言います。
実はこれはコンパクトデジカメの弱点です。左の写真は沖縄県の西表島の海岸を撮影したものです。一眼レフと15mmの魚眼レンズで撮影していますが、浜辺から空の上の方まで非常に広い範囲が写っています。この15mmという数字が画角を表していて、数字が小さい方がより広角(広い範囲が写る)になります。
一般に画角は35mm判と呼ばれる普通のフィルムカメラに換算した値が用いられています。現在、発売されているデジカメの画角は35mm~200mm程度のものが主流です。実はデジタルカメラは広角が苦手なのです(記録する映像素子の大きさと関係しています)。逆に望遠は得意です。
よくデジカメの売り文句には「光学6倍ズーム」等と書かれていますが、これは画角のうち望遠側の話で、どこまでズームできるかというものです。望遠は便利な機能ですので、メーカーとしてはデジカメが得意な望遠側をアピールするのは当然だと言えるでしょう。しかし、旅行では望遠側はそんなに多用しません。望遠は文字通り、遠くのものを撮影する機能です。
旅行のスナップでは、狭いホテルの部屋でみんなで集合写真を撮る、高い建物の先端まで写し込んで記念撮影するといった具合に、広角が要求されるケースが多々あります。この写真のように極端な広角を撮影できるカメラとなると、残念ながら一眼レフを選択せざるを得ません。ですが旅行にはコンパクトでいきたいので、機種選定の時にはぜひ少しでも広角撮影ができるものを選びましょう。
比較的品揃えがある範囲では、28mm~の撮影ができるものが良いと思います。私が使用しているIXY900ISも28mm~の撮影が可能です。わずかな差ですが28mmと35mmの差は大きいです。正直なところ光学3 倍ズームと6倍ズームとでは、旅行での活躍シーンを考えると、実質的に差がないと言ってしまって良いと思いますが、広角28mmと35mmでは大きいです。35mmではあと数歩下がらないと全体が入らないというシーンでも、28mmではなんとか画面に入るといった感覚です。望遠側を割り切ってでも広角を得る価値はあると思います。
最後に(3)です。これは主に海外旅行に行くという人が該当します。現在発売されているコンパクトデジカメのほとんどは、極薄型で充電池で使用するタイプです。あえて言い切ってしまいますが、これは海外向きではありません。特に、年配の方、荷物を軽くしたい方、電化製品に弱い方にとっては、絶対に乾電池式の方が良いです。
理由は単純で、海外では電圧やコンセントの形状が国ごとに異なり、その都度適応したタイプの変換器や変圧器を持って行く必要があるからです。正直言って海外で充電をするというのは面倒なのです。
まず疲れてホテルに戻って来てから、数少ないコンセントを探し回ってデジカメの充電をしなければなりません。ホテルによっては部屋にコンセントがなかったり、1個しかなかったりします。ところが今日では電化製品は多いので、その1個のコンセントが奪い合いになります。携帯電話、ドライヤー、シェーバー、ゲーム機、携帯用音楽プレーヤー、パソコン。充電を必要とするものばかりです。下手をすると、夫婦や兄弟、友人で複数のデジカメを持って行ったり、デジカメとビデオを持って行ったりすると、確実に充電が大変になります。延長コードを持ち歩いているという人もいるようです。
もし充電を忘れて寝てしまったり、何日も充電しなかったりすると、肝心な時に撮影ができません。予備のバッテリーを持って行くという方法もありますが、予備のバッテリはかなりの価格で、その機種にしか使えません。
ところが乾電池はどうでしょうか。これは世界どこの国に行ってもだいたい売っています。しかも、いざという時も有名な観光地や近くのお店で簡単に手に入ります。勝手の知らない、言葉の通じない海外でも、乾電池を見せれば、誰もが知っているのでほとんどの場合買うことができます。いざということきに、その国の言葉で「デジカメの充電をしたいのですが・・?」って言える自信はありますか。
また普段日本で使用する際には充電池式の乾電池にしておけば、バッテリー使用と何も変わらない感覚で使えますし経済的です。
問題は乾電池が使えるタイプのデジカメは、機種が限られていることです。しかし、乾電池式でも(1)~(3)のすべてのポイントを満たしたものは発売されていますので大丈夫です。
私は家族には海外旅行では乾電池式のデジカメを持たせていますが大変好評です。電池を替えるだけですので、普通のカメラと同じ感覚で利用できるようです。何よりも「どうすれば充電できるの?」「充電しておいて」という質問が、私にこないだけでも楽です。
それでは反対に、カタログにはよく記載されていますが、気にしなくても良い項目について書きます。
筆頭は「画素数」です。これは全く無意味です。なぜいまだにこの数字が、カタログに大きく記載されているのか各メーカーのセンスを疑います。
画素数とは記録できる映像素子の数です。端的に言ってしまうと、そのカメラで最大サイズで撮影できる画像の大きさにしか過ぎません。
昨今発売されているデジカメは何を買っても必要十分以上の画素数があります。
画素数の目安ですが、L判(普通の写真プリント)やはがきプリントの場合で約200万画素、A4程度のプリントでも約500万画素あれば大丈夫です。今のデジカメは600万画素~2,000万画素もあり、もうオーバースペックなのです。写真はプリントしなくて、ブログやホームページに掲載したり、電子メールで送るだけというのであれば、30万画素~200万画素もあれば十分なのです。それ以上の画素数で撮影しても、画面に表示できない大きな画像にメモリカードを占有されるだけで特にメリットはありません(画素数が大きくなると必要になるメモリカードの容量も比例して増えます)。風のおひるねの印刷用Lサイズ画像のような巨大な画像が、1,000万画素クラスの画像の大きさです。これは普通使いませんよね。
我が家では家族は旅行から帰ってくると、メモリカードを写真屋さんに持って行って、プリントしてもらいます。このときに普通の写真はL判、特に気に入ったものは2L判にしてもらってアルバムに整理しています。この用途なら300万画素~400万画素で十分です。
その他、広告にはいろいろな名前の付いた機能もたくさん掲載されていて、違いがあるかのように書かれていますが、実はメーカー間でそんなに大きさな差はありません。これを使いこなせるなら、とっくにカメラマニアになっていると思われますので、これも無視して構わないと思います。
最後にISO高感度です。特に最近では、手ぶれしないとか、高感度がよいとか、売り文句になっていますが、正直変わりません。
ISO感度をあげると、暗いところでもシャッター速度が上がり、手ぶれしにくくなります。が、反対に画像にはノイズが乗り、ざらざらとした画質が悪い写真になってしまいます。コンパクトデジカメの場合、あらゆる対策の中でISO感度を上げるのは最終手段だと考えた方がよいでしょう。もし手ぶれするなら、手ぶれ補正機能を使用する、上に書いたように手すりや机など近くにあるものを利用する、セルフタイマーを活用する等して回避する方がきれいな写真が撮影できます。
ISO 高感度できれいな画像を得るには、同時にノイズリダクション処理も必須になり、多くの場合、それは後でレタッチソフトで補正するか、カメラ内の処理能力に左右されます。またISO感度を1段階上げても、シャッター速度が1段階分速くなるだけです。つまり、ISO80→400(3段階増感)にするのと、光学式手ぶれ補正機能(シャッター速度3段階分の補正)は概ね同等の働きをします。これなら手ぶれ補正機能があるカメラでISO80で撮影した方が断然きれいです。
さらに多くのコンパクトデジカメで宣伝に書かれているISO1600とかISO3200といった超高感度領域は、本当にノイズだらけになってしまうので、まさに緊急回避程度にしか使用できません。コンパクトデジカメできれいな写真を残したいなら、可能な限りISOは低く抑えて撮影するのが良いのです。だからといって高感度は不要な機能ではありませんが、特に高感度だから買うというメリットがあるものでもないのです。
また間違いやすいのですが、カメラによっては光学式やCCDシフト式ではなく、単にISO感度を自動的に上げるだけ、またはカメラ内で処理するだけの機能を「手ぶれ軽減機能」等と紛らわしい名称を付けて発売している場合があります。これは手ぶれ補正ではないので注意してください。こういう機能を使っても、手ぶれは止められるかもしれませんが、ノイズの乗った画像になってしまいます。