ワイドビュー特急キハ85系
久しぶりに鉄道車両の紹介です。
JR東海の特急用ディーゼルカー「キハ85系」です。
特急「ワイドビューひだ号」と「ワイドビュー南紀号」に使用されています。
この車両は在来線の列車の中では、個人的に最も好きな車両で、みなさんにもぜひ乗車をおすすめしたい列車です。
キハ85系の魅力は
(1)ワイドビューの名前の通り、大きな車窓から景色が楽しめる。
(2)走っている区間の景色がとても綺麗。山あり、海あり、世界遺産あり。
(3)座席が良く乗り心地が非常に良い。特に普通車(指定席・自由席)が秀逸。
(4)高速で安定した走行性能。
(5)閑散期の短い編成から多客期の長編成まで、多様で効率的な車両運用が可能。
といったところでしょうか。
(1)の車窓ですが、窓が大きいだけでなく、座席の位置も高くなっています。
車内に入ると通路がありますが、座席はすべて通路よりも一段高い位置に設置されているのです。座ると肘掛けの位置(座った足の上面の位置)が窓の下端になります。
ですので窓側の席に座ると、視界を遮るものがほとんどなく、素晴らしい展望が楽しめます。これは編成全体のどこでも全席がそうです。
展望車両のように一部の座席の展望が凄いというわけではなく、すべての座席が平等に眺望を楽しめる構造になっています。
たぶん「ワイドビュー」というのは元々そういう意味で付けられたのではないかと思いますが、展望車のイメージが強いため、誤解している人もいると思います。キハ85系は全席ワイドビューなんです。
また前の座席との間隔が比較的広いため、開放感があります。
キハ85系の窓は、前後2列で1枚の大きな窓が割り当てられているので、座席番号によっては、前方に窓枠が来るケースがあります。これは他の列車でも同様ですが、こういう座席でもそれほど視界を遮られる感じはしないと思います。
また最初の写真のような非貫通型の先頭車車両の運転席後ろの座席では、横に加えて前方の展望も楽しめます。運転席にはサンルーフがついていますので、本当に広々とした感じです。
こうしたワイドビューとの組合せで見る(2)の景色は素晴らしいです。キハ85系が走る区間には、日本の鉄道車窓の良い点がぎっしりと詰まっています。
ワイドビューひだ号(大阪・名古屋~高山・富山)では、川と峡谷、山間部と日本の原風景を見ることができす。
国宝である犬山城を見て、まるでドイツのライン川のような景色が見られる木曽川の日本ラインに沿って走り、奇岩と絶壁が続く飛水峡を越え、中山七里ではダム湖横をまるで湖の上を滑るように進んでいきます。川の両側に広がる日本三名泉のひとつ下呂温泉に停車した後は、トンネルを抜けて山間部の農村を見ながら世界遺産「白川郷」の入口、古い町並みで有名な高山へ。その後も北アルプスを眺めながら、越中おわら風の盆で有名な八尾を通って、立山連峰が聳える富山まで。1回で乗ってしまうには惜しいほどの内容です。
キハ85系の先頭車両にはヘッドマークがついています。
ワイドビューひだ号のヘッドマークは、飛騨の合掌造りの家のシルエットです。
一方のワイドビュー南紀号(名古屋~紀伊勝浦)では、美しい海岸線と白浜が見える海と山、そして都市近郊部の平野が見どころです。
海抜ゼロメートル地帯を走り地上駅では日本一低い場所にある駅を通過します。木曽・長良・揖斐の大河を次々と渡り、田園風景と都市部が交じる近郊区間を過ぎると伊勢神宮の玄関口。車内販売で松阪牛の香り楽しんでいるうちに山間部に入ります。急な坂を下ると、ぱっと視界が開けて青い海原が見える一瞬は感動ものです。(紀伊勝浦行きの場合)右手には世界遺産の熊野古道が通る山々を、左手には海の間に漁村や白い砂浜を見ながら走ります。新宮を過ぎるとどこまでも続く海の横を通ります。ご神体でもある那智の滝の最寄り駅である那智駅を通過すると、鮪や鯨で有名な終着勝浦。本州最南端はもう目の前です。
こちらも1回では全部を楽しむことはとてもできません。
ワイドビュー南紀号のヘッドマークは、この那智の滝のシルエットになっています。
こうして書いてみると、多数の日本らしい観光資源がずらりと並んでいることがわかります。この車窓があるからこそワイドビューだとも言えるでしょう。
特急列車の系統としては名古屋駅で分かれていますが、どちらもキハ85系が走ります。
つづいて(3)は、個人的にはとても大切な点だと思っています。
先ほど全席ワイドビューと書きましたが、キハ85系は普通車にこそ、その良さがあるのだと感じています。
南紀号には定期便にはグリーン車はないのですが(昔はあったと思うのですが、いつの間にか連結されなくなっていた)、ひだ号にはグリーン車があります。グリーン車も良いのですが、正直なところ、この列車に限っては普通車でもグリーン車でも差がないと感じるほど普通車の座席が良いのです。全席グリーン席に近いという表現が正しいかもしれません。
普通車でも座席の位置が高く、前後の席の間隔が広めに取られているため、ゆったり感があります。
ディーゼルカーですのでエンジンの響きや振動があるのですが、座席位置が高いためか、びりびりとした感触はなく非常に快適です。
変な言い方ですが、JR在来線ではハイエンドの普通車だと思います。
普通車が良いということは、自由席でも快適な旅ができるということで、これはお得です。
どちらの特急も観光地だらけなので、何回か乗車しようという気になることもポイントではないでしょうか。リピーターになりたくなる列車なんです。
(4)と(5)は車両そのものについてです。
キハ85系という列車は、意外に古くて平成元年(1989年)に登場した車両です。走り始めてもう20年経つことになります。
国鉄の後を引き継いだJR東海として、初めての新形式がこのキハ85系です。
しかし今乗ってみても古い印象はありません。そこがキハ85系の優れている点だと思います。
時代を超えて通用するものを作ることは大変です。キハ85系は今日乗っても、古くささも不快感もありません。実は凄い車両なのではないかと認識を新たにしたのは21世紀になってからです。長年通用するということは、エコでもあり、経済的にも有利ですので、経営を安定化させるのではないでしょうか。
この列車が最初に登場したのは高山本線。「メタモルフォーゼ高山線」というキャッチフレーズとともに「ワイドビューひだ号」として走り始めました。
米国製の高出力エンジンを搭載していて、加速力や速度はディーゼル列車とは思えないほど良く、まるで電車特急のようだと感じたことを覚えています。いまでもスムーズな走りは健在で、車体傾斜こそしませんが、山間部のカーブが続く路線を颯爽と走り抜けていきます。
ひだ号、南紀号とも終点まではかなり遠く時間がかかっていましたが、キハ85系になってから大幅に到達時間が短縮されました。
「メタモルフォーゼ」とは変身という意味ですが、本線の名前がついているにも関わらず、それまでは古くて遅いローカル線のイメージだった高山本線は、まさに変身をとげたと思います。沿線の観光設備も充実しており、日本有数の観光地として賑わっています。
この列車の登場によって、沿線の地域交通も改善されたように思います。特に高山本線は列車の本数が増えました。観光客だけでなく地域の輸送と、南紀号の多気辺りまではビジネス客の輸送も担っているように思います。
気動車は電車とは違って、比較的柔軟に車両編成を組み替えることができるメリットがあります。キハ85系でもその点を活かして、繁忙期には9両編成のように大量輸送ができ、逆に閑散期には3両程度まで編成を短くして経済的な効率を高めています。
ひだ号では高山までの利用者が多く、高山-富山間では少なくなる(名古屋-富山間には北陸線経由で電車の「しらさぎ号」も走っている)ので、高山駅で後ろの編成を切り離して運行されています。
今日では平行する高速道路が全線開通し、バスなどのライバルも増えてきました。登場から20年経って競合は増えましたが、それだけ沿線の活気が溢れるということですので、これからも負けないように頑張って欲しいと思います。
キハ85系は、鉄道ファンを含めていまひとつ受けが悪いようにも感じています。
JRの宣伝ではありませんが、個人的には車両としては在来線ナンバーワンの列車だと思いますので、このいまいちマイナーな特急に興味をもっていただければという思いです。
残念ながら車内サービスが特別凄いといったようなことはないのですが、日中は車掌さんが放送で沿線の観光案内もしてくれます。
キハ85系があまり人気がない(ような気がする)理由は、なんとなくわかります。
ディーゼルカーであること、カラーリンクがどうも地味であること、スタイルに奇抜性がないこと、などではないかと憶測しています。
JR東海のカラーリングは基本的に統一されているので、ぱっと見ただけではどの特急かわかりにくいし、写真に撮ってもあまり変わり映えがしないことは理解できます。
東京駅では様々な色の特急や通勤列車が来るのに、名古屋駅ではみんなオレンジのラインが入った車両ですから。
それでふと気がついたのですが、一般の人の列車に対するイメージは「見た目」や「速度感」等が重視されているんですね。ある意味当然だと思います。
鉄道ファンにもいろいろな種類があって、私のように乗って旅行することが好きな「乗り鉄」は、わりと数が少ないように感じています。
SLや鉄道のイベントでも写真を撮ったり、駅にいる人は多いけれど、車内はけっこう空いていたりすることが、ままあります。
私がキハ85系が好きな理由は「乗り鉄」だからです。この列車の魅力は乗ってみると実感できるのです。
地方でイベントがあった時、列車をはじめとして公共交通機関で行く方が、その地域により多くの経済効果をもたらします。自家用車で行く人の倍以上になるという調査もあるようです。
公共公機関を使えば、運賃は地元の会社にお金が入りますし、駅で記念品や駅弁を買ったり、地元の商店で食事したりお土産を買ったりしても、地域にお金が入ります。
これから高齢化社会になり、全ての人が自分で車を運転できる状況ではなくなってきます。地域の公共交通の重要性は増していくと思います。
その時に鉄道が選択肢として残っているように、毎回でなくていいですので、列車に乗って観光に行っていただきたいと思います。環境にも優しいですよ。
ワイドビューひだ号、南紀号ともに、名古屋駅で乗り換えです。上下とも新幹線に接続していますのでスムーズに乗り換えできます。
東海道新幹線から名古屋駅でひだ号、南紀号に当日に乗り継ぐ切符を通しで買うと、乗継ぎ割引が適用されてひだ号、南紀号の特急料金と指定席料金が半額になります。帰りに限って(ひだ号、南紀号から新幹線への乗継ぎ)は名古屋で一泊して翌日の乗継ぎでも割引になります。
東京からのぞみ号でこの割引を利用して、通常期の片道大人一人(普通車指定席)のお値段は、
飛騨古川まで:15,660円
高山まで:14,500円
下呂まで:13,500円
紀伊勝浦まで:15,930円
新宮まで:15,620円
熊野市まで:15,300円
松阪まで:13,150円
です。上記金額より、多客期には200円高く、閑散期には200円安くなります。
その他、お得なきっぷや周遊きっぷの「飛騨・奥飛騨ゾーン」「南紀ゾーン」も利用できますので、旅行代理店に相談してみてはいかがでしょうか。
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