メルクリンの魅力(5)
6.遊び方スタイル
メルクリンという鉄道模型は、遊ぶ人が自分のスタイルに合った付き合い方をできる模型です。
メルクリンを始める時にある程度遊び方スタイルを意識しておいた方が、後から楽になると思いますので、今日はスペースとは別の意味の規模になる「遊び方のスタイル」について書こうと思います。
鉄道模型という趣味は「物」なので、基本的に空間のキャパシティが最終的な制限になります。わかりやすく言うと、例えば、車両をコレクションしたいと思ったとしても、自分で管理できる範囲がコレクション数の上限になります。
一方で「旅行」とかいった趣味は「行動」なので、これは当てはまりません。お金や時間の制約は発生しますが、生きている限り行きたい場所に無限に行き続けることが可能です。ですので「無秩序にあてもなく旅に出る」といったようなスタイルが可能になります。
メルクリンから発売されている車両数は膨大です。Nゲージも多いのですが、メルクリンも毎年かなりの新製品が発売されます。カタログも毎年更新されますが、1冊は厚さが1cm以上ある本になるほどです。
毎年欲しくなるような製品は発売されますし、それだけ奥の深い、幅のある鉄道模型なのです。
カタログを見てうれしくなって、どんどんと製品を買っていると、やがて保管場所がなくなったり、遊ばない車両が出てきたりします。そこで計画性と管理の必要性が生まれてくるのです。これはいわばメルクリンのポートフォリオです。
もちろん「手当たり次第に場所がなくなるまでやってみる」というスタイルもあると思いますので、そういう方針でも良いかもしれませんが。
出発点であるスターターセットを分析してみましょう。
基本的な(メガとかではない)スターターセットには、電源(アダプタ)と、列車が1編成と、1周と引き込み線程度分の線路と、モバイルステーションが同梱されています。
これでできる遊び方は、モバイルステーションというコントローラーの性能の制約で決まります。
(1)モバイルステーションで主にできること
・2~3列車(編成)までの同時運転(※実際の消費電力により左右されます)
・最大10列車(デコーダー搭載車)までのリスト登録
・最大9個(ライト+マルチファンクションボタン×8)のファンクション制御
※実はモバイルステーションには2種類の製品(スターターセット同梱品とそうではない単体品)があります。これは性能が低いスターターセット同梱品の方のスペックです。
余談ですが、出力電力の関係で、HOスターターセット同梱品タイプのモバイルステーションを1番ゲージで使用することはできません。1番ゲージには1番ゲージのスターターセットに入っているものか単体品を使用する必要があります。
10台までのリスト登録というのは、モバイルステーション内に一度に登録しておける列車の数です。メルクリンでは線路においた機関車を一度コントローラーに登録(自動または手動)してから、呼び出して操作します。各機関車が持っている機能によってボタン等の機能や操作が変わるからです。
例えばRe460という機関車を呼び出した時、モバイルステーションの画面にはRe460が搭載している機能が表示されます。これによって機関車の機能やボタンの役割をいちいち覚えていなくても、直感的に操作ができるようになっているのです。
持っている機関車が10台までなら、すべての機関車をコントローラーに登録できるので、どの機関車を線路に置いてもすぐに走らせることができます。
11台目を買った時点で、これを走らせるためには、他の10台のうちどれか1台の登録を、一度削除しなくてはなりません。つまり列車の管理アドレス帳のようなものです。10個を越えたら入れ替えながら使うことになります(新しいモバイルステーションを買う必要はありません)。
一方、最大9個のファンクション制御というのは、1台の機関車につき9個までのファンクションが操作できるという意味です。ファンクションというのは、ライトのオンオフ、汽笛を鳴らす、煙を出す/止めるといった機関車が持っている機能スイッチのことです。
列車によっては10個以上の機能を装備しているものがあるのですが、モバイルステーションではそのうちの9個までしか操作できません(残りの機能は使えません)、という意味です。
勘違いしやすいのは、モバイルステーションは1個で複数の列車を同時に走行させることができる、という点です。2列車を同時に走らせたいからと言って、2個のモバイルステーションを買う必要はありません。
同時に複数の人が操作する必要がなければ、基本的にコントローラーはひとつでOKです。
メルクリンでは、列車に指示をどんどん出していくという感じで操作をするからです。
A列車に「10段階目の速度で走行」という指示を一度行ったら、A列車は次の指示があるまで、何もしなくても10段階目の速度で走り続けます。この間にB列車に「5段階目の速度で走行」という指示を出せば、A列車とB列車は同時に走り続けます。
レイアウトの上でA列車を先発させて、次にB列車を続行させて、以後は細かくB列車の速度を調整していれば、たとえ単線の線路1本の円周であっても、一人で同時に2本の列車を走らせて遊ぶことができます。
ただし気をつけておかなくてはならないのは、モバイルステーションは列車を操作するには十分ですが、ポイント等のアクセサリの電動/遠隔操作はできません。
モバイルステーションのこういった性能は、普通に1周と引き込み線程度分の線路で遊ぶスタイルでは、必要十分な機能になっています。
なぜかというと、1周と引き込み線程度を広げるようなレイアウトでは、同時に線路上を走る列車は2編成か3編成くらいだからです。それ以上は線路が列車で埋まってしまうでしょう。それでも同時運転や、駅で行き違いしての交互運転が可能です。
ポイントの数は1個か2個程度ですので、手動で切り替えてもあまり手間でありません。
2つか3つの列車をいくつか交代させながら走らせるとすると、列車コレクションの数は10編成程度あれば十分でしょう。コレクションしている列車をすべて登録することができます。
スターターセットに同梱されているような列車はファンクションが9個以下です。また10個以上のファンクションを持つ機関車は少なく値段も高価です。
と考えると、かなりちょうどいい状態であることがわかります。まさに「スターター」状態なのです。
このスタイルの時、しまっておく場所はだいたい棚1段分程度のスペース、遊ぶ場所は畳一畳程度でしょうか。これがいろいろな意味で、メルクリンの最小スタンダードだと言えると思います。
この範囲内で遊ぶスタイル。これは一般の人でも普通に趣味としてできる基本スタイルだと思います。家族や子供さんとも一緒に楽しめるでしょう。衝動買いしてもそんなに文句を言われない範囲だと思います。
これでは物足りない。もっと鉄道模型したい!という人は、次のスタイルにステップアップすることになります。
ここで登場するのがセントラルステーションです。セントラルステーションは、モバイルステーションより上級のプロフェッショナルコントローラーという位置づけです。つまり、モバイルステーションが初級(アマ)とすると、セントラルステーションは上級(プロ)というコンセプトです。
(2)セントラルステーションで主にできること
・複数列車の同時運転(※実際の消費電力により左右されますが6~7編成くらいなら行けます)
・最大16個のファンクション制御
・ポイントやアクセサリの制御
※ポイントを電動遠隔操作するには別途ポイントごとに別売りのデコーダーとポイントマシンが必要になります。その他別売りの機器が必要になるアクセサリもあります。
・メモリー機能
※ポイントやアクセサリの動作を一括登録しておき一度に実行する機能。例えば駅の2番線を開通させるのに、本線のポイント2カ所と構内のポイント1カ所を切り替える必要があるとすると、それを登録しておいてワンタッチですべてのポイントをその状態にすることができる。
・8列車までの単純自動往復運転
・モバイルステーションとの連携
など、レイアウトのほとんどすべての操作が可能になる(カタログの文言)スペックのコントローラーです。
実際、通常のレイアウトならこの1台ですべての操作ができます。まさに運転司令室のようなコントローラーです。
大きさも小型のパソコンくらいですし、大きな液晶のタッチパネルを触って操作する形式なので、本当にパソコンのような製品です。
ただし価格は高くて、コントローラー単体で10万円近い(実売)価格になります。そういう意味でも、これを買うと言うことは、それだけメルクリンにはまるということになるでしょう。
現実には、セントラルステーションを買う時は、ポイントを電動化して遠隔操作したいと思った時になるのではないかと思います。
そこから逆算すると、レイアウトの大きさが部屋いっぱいくらいになって、たくさんの引き込み線と駅の配線ができた時がステップアップの時期でしょう。
そこまで広げなければセントラルステーションは必要ありません。ここを越えて遊ぶかどうかは、ひとつの境界線だと思います。
反対に、将来的にこの規模で遊びたいことが明確になっている人は、最初からメガスターターセットを購入した方が良いです。メガスターターセットにはセントラルステーションと2編成の列車等が最初から入っていて、高いですが極めてお得です。
セントラルステーションがあれば、モバイルステーションは必須アイテムではなく、なくても構わないものだからです。
初期投資は20万円近くになりますが、一気にハイエンドの環境が揃うことは魅力です。
モバイルステーションのスターターセットから入った人も、ステップアップしても、モバイルステーションは無駄はになりません。2台目のコントローラーとして子機のように使えるからです。
たとえば子供や奥様に「つまみを回すだけだから簡単だよ」と言って、モバイルステーションで列車の運転だけさせてあげて、他の制御は自分がやるといった連携の運転ができるのです。
実際にイベントの運転会では、5台のモバイルステーションと1台のセントラルステーションで子供たちにそれぞれの列車を運転してもらったことがあります。中には、汽笛を鳴らしっぱなしにしてしまう子や「まだ幼くて運転操作は無理だから汽笛だけ鳴らさせてほしい」といった要望がありましたが、セントラルステーションとの連携で容易に実現できました。
汽笛を鳴らし続けている機関車がいると(陰でそっと)止めてあげたり、煙のスイッチを切ってしまったことに気がつかず、煙が出ないと言ってる子の機関車の煙を(陰でそっと)出してあげたりすることができます。
それから子供は暴走運転をしがちなので、最初から列車の最高速度を下げて設定しておく(これでどんなに加速しても一定以上には加速しないようになる)ことなどもできるのです。
セントラルステーションを買う頃は、しまっておく場所は棚ひとつ分程度、遊ぶ場所は部屋ひとつ程度になると思います。
前にも書きましたが、メルクリンは走りを追求できる鉄道模型です。
セントラルステーションのこのスタイルが、ひとつの完成形だと思います。これを越えて遊ぶと言うことは、もう鉄道模型マニアの域になるでしょう。
より大きなレイアウト、自動運転、信号システムの導入、ターンテーブルやトラバーサーといった大型設備の導入など、それでもメルクリンには走り続ける要素がたくさんありますので、そういったことにチャレンジしていくことになると思います。
繰り返しになりますが、そこまで行かなくても走らせて楽しめることがメルクリンです。
基本形のスタイルで、1年に1度ずつ新しい列車を買い足したりして遊ぶことだって、かなり面白いはずです(毎年必ず1台は欲しい列車が発売されるものです)。このペースでモバイルステーションのリストがいっぱいになるのには10年かかります。けっこう遊べると思いませんか?
どれだけ伝わったかはわかりませんが、メルクリンは大きくも小さくも、走らせて遊べる模型です。
また、鉄道が好きでなくても楽しい模型でもあると思います。私は鉄道ファンでもあるのですが、メルクリンは好きだけど鉄道ファンではないよ、という方もかなりの数いることに、当初は驚きました。
日本の鉄道模型はそうではないように思います。列車の編成を知らない人、列車の型式番号を知らない人は、模型を遊ぶなんて許されない!なんて雰囲気があるように思います(個人的な感覚ですが)。
変な話、日本の鉄道模型運転会で、新幹線の前に機関車を連結して走らせたら怒鳴られるような気がします。でもメルクリンの運転会で「この編成はおかしい」とか「フランスではこんなことはしない」なんて言っている人を、見たことはありません。
私もそうですが、外国の模型だけに、実物を知らないで買ってしまうこともあると思います。海外で同じ車両を見かけて、「あ、これだ。模型とそっくり!!」(実は逆なのでとても変なのですが)なんて思うこともあります。
とにかく堅苦しくなく遊ぶことができ、現代人の家の中で普通に遊べて、価格も適切なものだということが、伝われば幸いです。
いろいろと書いてきましたが、明日で最終回です。
最後の明日は魅力ではなく、少しだけですが、弱点やリスクについてのお話です。
どんなものでも良いことばかりではないので、あえて悪いところを書きます。
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