雪の秘境を行く(1)
新年最初の列車旅は岩泉線です。
名前を聞いたことがある人も多いのではないかと思います。テレビや雑誌等でも紹介され、鉄道ファンの間では有名な路線です。何で有名かと言いますと・・・
本数が1日3往復しかないこと、それから誰もいない山の真ん中に駅があること、です。
秘境路線、秘境駅なんて言われています。運行しているJR東日本も連休に「秘境駅号」というイベント列車を走らせることがあるくらいですので、逆に「売り」にしているとも言えるでしょう。
昨年末に公共交通について書きましたので、年始は本数の少ないローカル線にスポットを当ててみたいと思います。
全国のJR線のうち、2009年1月現在で、定期便で最も列車の運転本数が少ない区間は1日3往復だけという区間になります。
該当する区間は全国に4箇所あって、北海道の札沼線の浦臼~新十津川間、福島県と新潟県を走る只見線の会津川口~只見間、島根県と広島県境をまたぐ木次線の出雲横田~備後落合間、そして、ここ岩手県の岩泉線の岩手和井内~岩泉間です。
ただし、例外的にちょっと面白い線として、休日に限っては、1日2往復しか走らない路線というのが都会の中にあります。しかも幹線の山陽本線で兵庫~和田岬間です。
ここは工場に通う人たちの通勤路線なので、休日は運転本数が極端に少なくなるのです。
岩泉線は他の2区間と比べても、かなり乗りにくい路線とされています。3本しかない列車のダイヤが特徴的だからだと思います。
普通は3本ある場合には朝昼晩と走っているのですが、岩泉線の場合には、朝と夕と夜なのです。さらに1往復だけある区間折り返し便は早朝です。つまり日中は1本も列車が走らない路線なのです。
夕方の列車の復路は、冬季ではもう日が暮れてしまった後の時刻になりますので、この区間の風景を見られる時間帯に走る列車は、冬なら1.5往復、春~秋でも実質的に2往復しかないのです。
また岩泉線自体がローカル線の山田線から分岐している路線であるため、朝の列車に乗車するためには、どうしても地元に宿泊(前泊)しなければなりません。最も近い都市圏である盛岡市からでも、列車では朝の便には間に合いません。盛岡駅から出る山田線を全線通る列車の始発時刻はなんと11時4分です。
私も最初にこの路線に乗ろうと計画した時には、台風がやってきて山田線があさっり運行中止になり、乗ることができなかった思い出があります。
都会では「運転見合わせ」と言い方をしますが、地方では即「運行中止」です。とにかく本数がないので、一度やめたらその日は走らないわけです。
結局、夏でもだめならと思い、リベンジは敢えて真冬に行いました。
真冬に往復の景色を見られるのは朝の1往復しかありませんので、必然的に地元に前泊することになります。観光と地域にお金を落とすという意味では最高です。
岩泉線の始発駅は茂市(もいち)駅ですが、ここは小さな集落で宿の心配がありましたので、海岸沿いの宮古に宿泊しました。
あらかじめ宿の人に言っておいて、夜が明ける前に出発です。
早朝の宮古駅は静まりかえっていましたが、売店はもう朝の準備を始めていました。
三陸海岸の駅らしく、駅には大漁旗が掲げられています。
始発列車には何回も乗ってきましたが、この時間帯から列車に乗っている客層は、大きく分けると3種類です。
登山客、釣り客、乗り鉄。いずれも気合いの入った趣味人たちです。早朝の列車は趣味人が支えていると言っても良いでしょう。
ただし都会では、これに通勤客と前夜の終電に乗り遅れた酔客が交じります。
余談ですが、登山客、釣り客同様に、乗り鉄にとっては早朝時間帯が最も重要です。
特に景色を見る必要がありますので、夜間は乗ってもあまり面白くありません。乗り鉄は早寝早起きで健康によいのです。
朝夕はラッシュで車内が混み合います。また午後は通学客で占有されてしまいます。したがって乗り鉄にとって、一番の時間帯は日中と早朝になるのです。
日中は列車が意外に少なく、長い路線を1本乗れれば良いというくらいです。となると短い路線や行きにくいところを乗るのは早朝にかかってきます。
実際に体感として、早朝にどれだけ乗ることができるかが1日の乗車効率を左右します。
ということで、宮古駅を出発した山田線の車内も、数人の乗客は全員が同好の方でした。おそらくそのまま岩泉線に乗り換えることは暗黙の了解です。
宮古から2~3駅過ぎると朝日が昇ってきました。今まで薄暗くてよく見えなかった車窓がはっきりと写し出されていきます。
7時前に茂市駅に到着。反対側のホームには岩泉線の列車が停まっています。私の乗った列車よりもさらに早朝に宮古を発車し、この茂市駅から途中の岩手和井内駅までを往復してきた列車です。
岩泉線はこのたった1両の列車が往復するだけの路線なのです。
以前は旧型の国鉄時代の車両が走っていましたが、今はキハ110形です。この車両も決して新しい車両ではないのですが、白いスマートなフォルムが雪景色にマッチしています。
茂市駅の待合室ではストーブが赤々と燃えていて、とても暖かいです。
駅前には雪の中に昭和の光景が広がっていました。
まだ人気はありません。
駅舎もどことなく優しさと懐かしさを感じるデザインです。
雪が積もって非常に美しいイメージになっていました。
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