11 月 4, 2008

満州遙かなり(2)

カテゴリー: 旅行 travel, 海外 abroad railway, 海外旅行 abroad travel, 鉄道 railway — しっぽしゃっぽ @ 6:00 pm

ホテルのレストランの壁紙です。一風変わったセンスで描かれていますね。

ホテルですが、都市ならどこでも世界の有名ホテルや、地元の大きなホテルが集まっていて安心して宿泊できます。サービスも設備も他の国と変わりありません。
反面どこの国に来たのか、室内では全くわからない無機質さがあります。ホテルだけ見れば日本国内にいるのと同じです。

さて哈爾浜駅ですが、駅前に売店がありました。日本のキヲスクのような感じです。

しかし、鉄道の乗り方と駅は日本とは大きく異なります。
まず駅には基本的には自由に入ることはできなくて、必ずチェックがあります。入口と出口もホームから完全に分かれていますので、入るときと出てくるときは別のルートです。列車に乗る乗客と降りた乗客が一緒になることは基本的にありません。

入口では空港のようなセキュリティチェックがあります。持っている荷物はすべて機械に通す必要がありますが、ひっかかることはまず100%ありません。といいますか、ここで捕まっている人を見たことがありません。
人が多すぎてチェック自体もできているのかどうか怪しいくらいです。でも一応通します。

乗車口への通路を進んでいくと待合室があります。
待合室は複数あり、どの列車の待合室かが表示されていますので、自分が乗る列車が表示された待合室に入ります。駅によってはチケットのチェックがあり、指定された待合室以外には入れないこともあります。

中国の大きな駅では、ホームごとに待合室があり、改札は待合室の中にあります。通路からの入口とは別に改札口があるのです。
ですので、日本のようにホームに自由に入ることは出来ません。列車が発車する何分か前になると改札が始まりますので、列に並んで改札を通ってホームに行きます。
待合室の中にも売店などがあります。あ、ようやく中国らしいものの売り方を見ることができました。

待合室には授乳室のようなものまでありました。見た目は古いのですが、意外と設備は整っているのです。

ホームに降りるともう列車は待っていました。
始発または停車時間の長い駅では、すでに列車が入線していることが多いです。

次に指定された号車のドアを探します。ドアには札がかかっていたりしますので、見つけるのは簡単です。

号車番号の案内札。これは11号車

すべての車両のドアには係員が立っていて、チケットのチェックをします。さすがに人海戦術の国です。駅にいる従業員は半端な数ではありません。
このため、地方の各駅停車のような列車でない限り、勝手に近くのドアから乗車しようとすると怒られます。自分の号車のドアに行きましょう。

出発直前のホームの様子

このような感じで、中国では駅でゆっくり列車を見物するとか、写真を撮影するといったことはあまりできません。
駅撮りの撮り鉄なんて皆無なのです。こういう体制のせいかはわかりませんが、鉄道ファン自体が少ないように見受けられました。

貨物列車

念のために、今回の写真はすべて現地の係員に許可をもらって撮影しています。
ところが「写真を撮ってもいいですか」と聞きたくても、英語は全く通じないので(日本のように片言でも通じるなんてレベルではなく本当に全く通じません)、中国語が話せるか、中国人の知り合いがいないと大変苦労します。
また、一人の人がいいよといっても、別の人がすぐに文句を言ってきたりして、ルールの統制もないのです。あまり目立たないように、コンパクトカメラとかでさくっと撮るのがいいかもしれません。
とにかく普通に列車(の外観)を撮影するのが意外にも困難なのです。列車も長いので先頭まで行ったりすると、不審者として見られたりします。

T184次特快

そうそう。乗る列車をまだ紹介していませんでした。
今回最初の列車は、T184次・新空調硬座特快の漢口(はんこう)行きです。
この列車で途中の長春まで行きます。

車両横に掲示されたサボ

電気機関車が牽く客車17両編成の長い列車です。
旧南満州鉄道という名前を聞くと、あじあ号のイメージもあって、非電化の大陸横断鉄道のような印象を持ちますが、現代のこの路線は全線が電化複線の近代路線なのです。

それに先頭の電気機関車も、外国型の鉄道模型をやっている人なら、あれどこかで見たような?と思うかもしれません。

CRH和階号

向こうのホームには中国の新幹線(高速鉄道車両)であるCRHが停まっていますが、それも、どこかの国で見かけたような形です。ペンドリーノとか言わないように。
そうなんです。中国はいま海外の技術を積極的に取り入れて、どんどんと近代化されているのです。今回の路線では走っていませんが、日本のE2系「はやて号」と同じフォルムのCRHが走るルートもあります。
蒸気機関車や旧式のディーゼルカーがゆっくりと走るという光景は、中国でも過去のものになりつつあるのです。
ヨーロッパの車両を元にしていますから車体は大きいです。日本の鉄道と比べると、一回り大きく、欧米で走っている列車と同じサイズです。
日本の列車がいかに小さいかが実感できます。

T184次・新空調硬座特快ですが、日本語にすると、特急184号・エアコン付き新型車、普通指定席特急券のような意味合いになります。
まず最初のTの文字は列車の種別を示しています。この列車は「特快」という種別で、日本の「特急」に相当します。
特快と書きますが、日本の中央線などで走っている速い快速ではなく、特急列車です。

中国では速い方から順番に、Z:直達特快(ノンストップ特急)、T:特快(特急)、K:快速(急行)、N:快速(急行)、数字のみ:普客(普通)などの種類があります。( )の中が日本で相当する種別です。
中国版新幹線のCRHや高速列車はまた別扱いで、D:動車組になります。
K急行とN急行の差は運転管轄区域です。区域をまたがる列車にKが付きます。

隣のホームに停車中の列車が「普客」、つまり普通列車です。

普客列車(普通列車)

「次」は第何列車という意味だと思いますが、日本語では号と考えれば良いでしょう。
その後は日本で言う「特急券」とかの座席と料金の表示です。
「新空調」は新型車のエアコン付きという意味ですが、中国でも優等列車は新型エアコン付きの客車がほとんどです。
ただし、何をもって新型車としているかは不明です。新型といっても最新ではなく、日本の国鉄時代程度の車両だと考えた方が無難です。
「硬座」は2等席のことで普通車に相当します。グリーン車相当の1等は「軟座」と書きます。

新空調の場合には「硬座」だからといって、板でできているような硬い席ではなく、普通のシートですからご安心下さい。個人的な感覚ですが、特快の座席の場合には、硬座も軟座もあまり変わらないように思います。
しかし普通列車だったりすると、本当に硬い木でできた席もあります。

普客列車のサボ

寝台車もあって、A寝台が軟臥、B寝台が硬臥と書きます。
実はこのT184次特快も、前の方に寝台車を連結しています。終点の漢口までは26時間44分も走るからです。日本ではありえない長距離列車です。

特快硬座の車内

ということで見ていただいた方が早いので、新空調硬座特快の車内はこんな感じになっています。
日本のごく普通の特急列車と変わりありません。この車両の場合には、日本の新幹線のように、座席配列が3-2式になっていますが、すべての列車がそうではありません。
後日登場しますが、2-2の車両もあれば、2階建ての車両も走っています。

ホームの売店

ホームにも移動式の売店があり、発車直前でもちょっとした買い物はできます。
よく見るとちゃんと衛生許可証が貼ってありますね。このあたりもきちんとしてきたということでしょう。
売っているものですが、飲み物はビールやお酒、ソフトドリンクと変わりありませんが、食べ物は大きく異なります。果物やソーセージ、謎のスナック菓子、カップ麺などが主流です。
カップ麺なんてどうするのかと思うかもしれませんが、後ほど謎解きをします。

車内販売もある

そうこうしているうちに発車時刻です。改札の関係でホームではそんなに時間が取れるわけではありません。
T184次特快は静かに哈爾浜駅のホームを離れます。
構内を出るとどんどん加速していきます。中国の特快はだいたい130Km~160Kmくらいで走ります。車体が大きいので、そんなに速度は感じませんし、カーブが少ないので揺れもほとんどありません。乗り心地は日本の鉄道よりもいいのです。

車内は大混雑です。中国では長距離列車は多くの場合、ほぼ満席になります。
ひどいと立ち席でデッキまで人が溢れかえっていることもあるくらいです。そうでなくても、以前は荷物が多くて通路や座席の間などを埋め尽くしていました。
この列車では車掌さんがいちいちうるさく指示して、荷物をどこかへどかしてしまったので、通路は確保されている状態ですが、見たところ空席はありません。

窓際には小さなテーブルがある

私の席は4人掛けのボックスシートの窓側です。窓際には小さなテーブルと銀色の皿があり、これを4人で共有します。
ちなみに銀色の皿はゴミ箱の代わりです。大きなゴミ箱はデッキにあります。

さて、ここでカップ麺の謎がわかります。実は中国の列車ではお湯のサービスがあるのです。
大きなやかんに入った熱湯を、各車両ごとに係員が持ってきてくれますので、声をかけると注いでくれます。無料です。
このときに、何に注ぐかは自由なのですが、係員はコップは持ってきてくれません。つまり最初からお湯を入れる物は用意しておく必要があるのです。
カップ麺もここで出せばお湯が注がれて、食べられるようになるというわけです。
これはキーポイントです。私も初めて中国の鉄道に乗ったときには知らなかったので、しまったと思いました。ミネラルウォーターを買って持ち込んだのですが、お湯が来るならその方がいいですよね。
多くの人は、水筒や魔法瓶を用意しておき、好みのお茶やインスタントコーヒーなどを楽しみます。インスタントコーヒーは一時期ちょっとしたステータスのようでしたが、今回はあまり見かけませんでした。
私はお茶です。ホテルでティーバッグの紐を取り外したものを、魔法瓶の中に入れて用意しておいたのです。
長春までは約2時間半の旅です。長い時間列車に乗りますので暖かい飲み物があると違いますよ。

メルクリンの魔法瓶と旅する

ところで私の魔法瓶ですが、写真で気がつきましたでしょうか。ドイツの鉄道模型メルクリン社のものです。1番ゲージの車両グロッグセットに同梱されている製品です。
小型で持ち運びやすいので、実際の鉄道旅行でも便利に使わせてもらっています。鉄道模型も大型になると、ちゃんと鉄道旅行でも役立ちます。

車窓に広がる広大な農地

哈爾浜を出ると、車窓には広大な農地が広がります。ちょっと天気が悪くなってきました。
天気は良くなったり、雨が降ったりと、ころころと変わる大陸性の気候です。

扶余駅に到着

1時間ほどで最初の停車駅「扶余」に到着です。FUYUと読むみたいです。
ここで後続のCRHに追い越されます。特急ですが、特急に追い越されることになります。やはりCRHは速さが売りなんですね。
車体を振動させて、白いCRHが一気に追い越していきました。

扶余駅の看板

CRHは China Railway High-speedの略で中国の高速鉄道車両のことです。
中国の新幹線と書きましたが、高速鉄道のイメージをわかりやすく伝えるためで、日本の新幹線とは大きく違います。
フランスやドイツと同じで、在来線と同一の線路の上を走ります。線路が別なのではなく、あくまで高速で走る車両なのです。速度差があるので、こうして後続の列車が追い抜いていったりします。
ただし駅での乗り場は独自の改札があったりして別になっています。

大河を渡る

大河を渡り、草原を越えて、列車は走り続けます。扶余の次の停車駅が目的地、長春です。
車窓には時折、昔ながらの集落が飛び去っていきます。
中国では、都市部では古い建物を壊しているようですが、田舎はそのまま近くに、新しいビルを建てたりしているようでした。土地が広いから、同じところを使わなくてもいいんですね。その方が費用も安いのでしょう。
そう考えると日本は狭い平野に建物がびっしりです。

地方の家々をかすめて走る

車内販売がやってきました。
売店で買えなくても、車内販売も充実しているので、食べ物や飲み物は安心です(現地のものを食べるという前提で、ですが)。

やっぱりお酒とおつまみ、食べ物は変わったラインナップです。
試しにソーセージを買ってみたのですが、大丈夫。おいしかったです。

車内販売のラインナップ

車内設備ですが、トイレや洗面所はあります。清潔で普通に使用できます。
前の記事で寝台特急「はやぶさ号」を紹介しましたが、あの車内のような具合です。日本の昭和40年代~50年代くらいの客車のイメージでしょうか。
なんとなくカーテンや車内のデコレーションも同じような雰囲気があります。

洗面台

私にとっては、あっという間に長春に到着です。
途中、晴れたり曇ったりしましたが、なんとヒョウが降っています。雨ではなく、あめ玉のように大きな白い氷の固まりがバラバラと音を立てて落ちてきます。
これにはびっくりです。珍しいなあと思っていたら、すぐに小降りの雨に変わりました。

長春駅のホーム

長春は吉林省の省都で、かつて満州国の首都だった場所です。その時代には新京と呼ばれていました。
四季がはっきりしていて、日本に似た風土を持つ都市です。次回は長春の歴史を紹介します。

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