垂直尾翼を修理
2004年2月

 同行予定者が都合で行けなくなったのでパラオに一緒に行かないかと、スキューバダイビングのライセンスを持つ友人から電話があり、日本では雪が降るかもしれない時期にも関わらず、思いがけず南の島へと飛ぶことになった。こうでもしないと君は南の海なんて行かないからね、とは彼の談である。 
  パラオ共和国は遙か南の洋上に連なる200以上の島からなる楽園の国である。グァムのさらに南西、赤道の少し北側(緯度10度前後)にあり、日本からの直行定期便はない。日本から見てほぼ真南に位置するため時差はない。
  ここはダイバーたちにとっては絶好のポイントが点在する場所であり、憧れの聖地でもあるという。そのためダイビング関連会社などが企画するパック旅行のチャーター便が、月に何回か運行されている。今回はそれを利用して、成田発のツアーチャーター便でパラオに発つこととなった。
  当初、成田を夜発ち、深夜2時前にはパラオに到着するスケジュールだったのだが、出発直前、乗客の搭乗が終わってから飛行機の通信設備に異常が見つかり、修復のためにそのまま機内で待たされることになった。しかし、通信機器は機材を取り替えても直らず、今度は垂直尾翼のカバーを取り外してアンテナの修理もするという。その間、機内でアイスクリームなどを食べながら待つ。アンテナの修理でなんとか機能が回復し、ようやく離陸。パラオに着いたのは夜明け前であった。
 パラオ国際空港からホテルまではバスで送迎してくれる。現地の人も、我々の到着を深夜なのに待っていてくれたわけである。なんだか申し訳ないような気になってしまう。
  成田空港の飛行機の行き先表示ではパラオは「Koror(コロール)」となっている。コロールはパラオの首都の名前であり、同時に首都がある島の名前なのだが、実は空港はコロール島でなく、お隣のバベルダオブ島にある。
  バスは空港を出ると、2002年に日本の技術協力で完成したばかりの、日本パラオ友好橋を渡ってコロール島へと入る。周囲はまだ真っ暗なので、景色がよいのかどうかもわからない。点々とライトと家のランプが灯っているだけである。
  コロールの中心街(といっても家々が少し立ち並んでいる程度)を抜けると、今度はコーズウェイと呼ばれる浅瀬に作られた土手のような橋を渡って、ホテルがあるアラカベサン島に移動する。この橋も昭和11年に旧日本軍が建造したもので、橋のたもとには未だにトーチカの跡が残っている。
  午前5時過ぎ。やっとホテルに到着である。Palau Pacific Resort(PPR)は、ホテルの敷地内に、プール、プライベートビーチ、レストラン、DFS、コンビニ、ダイビングショップ、ジムやジャグジー、専用の桟橋まで、滞在に必要なほぼ全ての施設が揃っている。日本大使館もこのPPRの敷地内にあるので大変心強い。
  あとは約1週間後に飛行機が迎えに来るまで、ここと海中を往復するだけだとは友人の弁。さっそく8時にはダイビング会社の船が専用桟橋にやって来ると言う。彼はライセンスを持っているので良いのだが、まだ体験ダイビングの私は、体力にそこまで自信が持てないので、本日分はキャンセルしてもらうように友人に頼んで、そそくさとベッドに潜り込んだ。

 

シュノーケリングとカクテルパーティー

 正午過ぎ、ドアをノックする音で目が覚めた。アロハシャツ姿のボーイが目をこすっている私を見て、ベッドメイキングをするかと申し訳なさそうに尋ねる。友人の分だけをお願いして改めて周囲を見る。
  広々とした部屋。天井でゆっくりと回転する大きな扇風機。テラスの向こうには椰子の木と青い入り江が見える。気温も湿度も高い。ああ夏だなと、一夜にして変わってしまった季節に驚いた。
  ボーイは、夕方にはホテルの池でエイの餌付けがあるからそれを見たらどうかと、そして、今夜はカクテルパーティーがあるからと案内状を置いていってくれた。とりあえずお礼を言って思い切りノビをしてみる。今日はまだ半日たっぷりと残っている。さあ、バカンスの始まりだ。

 ホテル内を一通りざっと見た後、水着に着替えてプライベートビーチに出てみる。きつい南国の日差しの中で、様々な国の人がパラソルの下でうたた寝をしている。ダイバーたちは、みな海に行ってしまったのか年齢層は比較的高めだ。人数も少なく、とても落ち着いた雰囲気である。
  ビーチの入口では、ボーイからタオルやシュノーケリンググッズを無料でレンタルできる。ホテルのプライベートビーチの先が、ちょうど魚たちが集まる有名なシュノーケリングポイントになっているのだ。
 ビーチから沖に向かって水が腰くらいに来る深さまで進むと、海底に珊瑚の岩場がある。ここまではあまり魚の姿は見受けられない。岩場の先からはやや水深が深くなるので泳ぎながらゴーグルで海中を覗く。
  いたいた。色とりどりのきれいな魚がちらほらと泳いでいる。中には私の体をつんつんとしきりに突いてくる魚もいる。実は縄張りを守るために威嚇しているそうだ。
  また少し進むと再び珊瑚礁がある。珊瑚の岩の上に立てば海面に顔が出るが、水深は足が着かない程度の浅瀬だ。どうやらここがポイントらしい。様々な種類の魚が、ひらひらと美しい色彩を煌めかせて水中を舞っている。水族館の中に自分も入ってしまったかのような光景である。
  魚たちと一緒に泳いでいると、時間はあっという間に過ぎてしまう。そんなに泳いでいた感覚はなかったのだが、部屋に戻ると3時半を回っていた。
  シャワーを浴び終えるとすぐに、友人がダイビングから帰ってきた。ほとんど寝ていないから疲れたと言いながらも、エイなどが見られて満足そうである。
  陽が傾いてきたので、ボーイからもらったカクテルパーティーの案内状を持ってプールサイドへ向かう。案内状によると、お奨めは『スペシャルココナッツ・ラムパンチ』と書いてある。ドリンクサーバーは椰子の実を丸ごとひとつ取り出すと、ナタを振るって上部を大きくカットし、中にラム酒を注ぎ込んで手渡してくれた。ココナッツのラム酒割といったところか。なかなかいける。
  カクテルパーティーも終盤になると、パラオの民族衣装(?)を身につけた人が登場し、歌と踊りが披露される。男性が威勢良く叫ぶ漁師たちの歌のようだ。
  太陽が大海原の彼方に黄金色になって落ちていくと、すぐに黒雲がわき上がってスコールがやって来た。パーティーもお開きになり、そのまま屋根のあるレストランに移動した。当初は、パーティーの後はコロールの街の食堂にでも行こうかと話していたのだが、いろいろとつまんでいるうちに十分に満足してしまったので、食後のフルーツを食べただけで部屋に戻った。

小さな島が並ぶ南国の楽園パラオ
カクテルパーティーのテーブル

 

1/5p