楽器ケースの中のレイアウト 2003年3月

 

 前回いくつか課題があったのですが、その中でも一番大きいのは寸法の問題です。
  鉄道模型は性質上どうしても、『平坦で』『ある程度の面積があり』『上に何も乗せなくても許される』ような状況が必要になります。小学生の頃作っていたNゲージのレイアウトは、ベッドの下に収納するようになっていました。日本の住宅事情では大型レイアウトは難しいでしょう。
 根本的な解決方法としては、家を換えるというのがベストですが、さすがにそんなことはできないので、頭をひねる必要があります。反骨精神で欧米人をぎゃふんと言わせたいですね。

 鉄道模型の収納は本当にやっかいです。大きさもさることながら、作成するのに時間がかかる(しかも多くの場合は永遠に未完成)ので、日曜日になったらいつでも作業を開始できることという条件が加わります。
 また、精密な機械とストラクチャーの集合体なので、ほこりをかぶらないようにしなければならないという条件もあります。さらに、折り曲げたり、分割したりは基本的にはできません。それから使うとき(列車が走るとき)には完全に安定した平坦な場所が必要になるのです。
 分割するレイアウトというのは、実はわりとよくあるのですが、分割区域のメンテナンス性を考慮しなければならないのと、分割しても、それぞれは結局収納しなければならないので、本質的に問題を解決できるわけではありません。
 しかし、近年はこの制約を逆手に取ったのか、Gゲージ以上(線路幅が4.5cm程度ある大きなモデル)の全天候型に設計された大きなゲージで庭園鉄道を楽しむ人が増えているとも聞きました。確かに庭園鉄道にしてしまえば、ガーデニングとして楽しめますし、そもそも庭ですから片付けなくて済みます。ところが、悲しいかな、私は東京に住んでいるので鉄道が走れる庭なんてないのです。

 悩んだあげくに考えたのが楽器ケースでした。トランペットとかホルンとか入れるあれです。
 (吹奏)楽器は大きなものになるとケースも丈夫で、それなりにしっかりしたものになります。しかも中に入れるものが楽器ですから、ホコリや衝撃対策もそれなりにされているでしょう。
 Nゲージでは無理ですが、Zゲージなら最小40cmあれば曲線で反転することができますから、それなりに大きな線路も入るケースがありそうです。
 さいわい友人に作曲家をしている人がいますので、彼に相談してケースを選定、発注しました。

 楽器業界もインターネットがずいぶん普及しており、なんとケースは次の日に届きました。
 汎用のオーディオ機器運搬用のもので、サイズは、W130cm×H60cm×35cmのケースとしては大きなものです。
 内側には一面にスポンジがついていて衝撃吸収にいい感じです。もっともうれしかったのは、キャスターがついているという点です。これでごろごろと押していけば、これだけ大きなものでも壁際に立ててしまっておくことができます。
 このケースの内側に線路を敷きます。Zゲージではどれくらい線路が敷けると思いますか?なんと1枚目の写真のように周回の線路なら余裕で入ってしまいます。小さいということは日本にあっていると思います。

 さて、スポンジ面に直接レールを置くわけにはいきませんし、しまうときは立てて収納するのですから、立てても(最悪ひっくり返っても)大丈夫なように工夫しなければなりません。
 そこで、楽器ケースの中にすっぽりと収まるサイズの木枠を組んで、その上にレイアウトを作ることにしました。これなら、レイアウトを作るなどの作業をするときは楽器ケースから取り出して、広いところで作業ができます。たとえ楽器ケースがひっくり返ったとしても、木枠がありますからつぶれたり、内面に衝突したりすることはありません。ケースの内側にはスポンジもついていますので、緩衝材の中に入っているような状態になります。

アルミで作った枠
レイアウト台にとりあえずレールを置きました

 意気揚々とDIYセンターに材料を買いに行きました。しかし、木は意外と重たいことがわかり、アルミ製の金属で枠と土台を作成する方がいいのではないかと考え、最終的には、金工用の電動のこぎりまで買い求める一大ショッピングとなってしまいました。

 そんなこんなで、できたオリジナル・レイアウト台がこの写真です。枠の部分を完全に四角く組んでしまうと、見えにくいので、最終的には手前側の上部だけ枠を外しました。
 写真では、まだ上側の枠がない状態になっていますが、ケースの中にすっぽりと入ることが確認できます。

 

 

    ファンタジーでディテクティブな鉄道!?  

 

 寸法の問題が解決しましたので、レイアウトの問題も予想以上に楽になりました。
 思っていたよりも多くの線路が敷けるのです。特に高さが35cmもありますから、線路は全体的に2階建て構造にして、何本かの列車を同時に走らせることができるようにしようと考えました。

 最後に残ったのが、シーナリーの問題です。
 よく博物館などにあるレイアウトは、実物を忠実に再現しています。雑誌やWEBも参考にしたのですが、多くは情景をリアルに再現する目的のものでした。
 おしゃれな感じのレイアウトでは、逆に家具に線路を敷いたようになっています。私としては、銀河鉄道や水中鉄道(なんと、これは作っているところがあったのですが!)をイメージしていたので、何かギミックを仕掛けたかったのです。あんまり難しいのは技術的に課題が残りますが・・。

 そんなとき、ふと、あることに気がつきました。
 WEBなどでレイアウトを公開されている方の多くが、自分の鉄道の歴史や設定を紹介していたのです。私も、まずは世界観の設定から取りかかることにしました。

 舞台はファンタジーです。
 単純ですが、 ファンタジーといえばヨーロッパ中世風。これはZゲージの車両ともマッチします。
 お姫様がいて、騎士がいて、お城があったり、ドラゴンが住んでいたりしてもらいたいです。
 ケースに高さがあり、2階部分があるのですから、列車が空を飛ぶというのがいいかもしれません。
 それから列車と言えばミステリー。西村京太郎氏や松本清張氏に代表されるように、癖がある優秀なディテクティブ(探偵)が欠かせません。
 あとは、私は猫が好きですから、小動物が登場すると楽しいですね。
 こうやって、あれこれと想像するのは楽しいのですが、そんなこんなで最終的にできあがった世界はこんな具合です。

 東の空が明るくなり朝が近づいている。
 ホームの端に置いた大きなトランクに腰をかけ、目深に帽子をかぶった男が1本のタバコに火をつけた。彼の背後には、タバコよりも遙かに雄大な煙を立ち上らせている巨大な火山があった。

 火吹き山。住民にそう呼ばれる火山の麓にある古代文明の遺跡で、彼は昨日、探偵として初めての仕事を完遂した。そして、その報酬がいま足元にいる。
 にゃうー。気の抜けた声で鳴く子猫。「迷子の猫探し」の報酬だ。親猫は子猫をたくさん産んだ。飼い主はもらってくれと言い、彼は断ったのだが、その中の1匹は勝手に後をついてきた。

 にゃうー。猫が鳴くと、地平の霧中から朝一番の列車が現れた。見たこともない列車だ。流線型のボディ。光るプロペラ。
 振り向く探偵の頭上で、雲が切れ、太陽が顔を見せる。

 探偵はまだ知らない。火山灰が飛ぶこの土地で、太陽が姿を見せることは数年に1度しかないことを。相棒の子猫の瞳に、雲間に光る銀色のレールが映っていることを。
 そして、今日が探偵にとって忘れることのできない事件の幕開け日になることを。

 うーん、ちょっと映像化するのは難しそうですね。でも、趣味なんですから、そのくらいでちょうどいいのです。どうせ永遠に完成しない鉄道なのですから。

 最終的に決定したレイアウトの図面です。
 全体的に2階層構造になっていますので、2枚に分かれています。右側の図が、左側の図の上に乗っかる格好になります。1階部分が地上世界で、2階部分は天空の世界を想定します。
 レイアウトの左には、火吹き山こと、大きな火山があります。地上の列車はトンネルで火山を抜けていきます。火山は絶えず火を噴いていますが、山肌には鉱山があったりして、人々は活力を持って生活しています。
 街の部分には農耕地もあります。豊穣を祈る人々が見られます。
 街の背後にあるのは大きなお城です。物語のヒロインが登場する予定です。
 鉄道は街の交通を担っています。大きな車庫があり、様々な種類の列車が駆け抜けていきます。鉱山や作物を交易したり、観光者が訪れるためです。
 世界の人は気がついていませんが、空の上層には古代文明の力で走る天上列車があります。何のために走っているのか、それは不明です。 お城や火山を覆う雲の上を、見たことのない列車が走るのです。

 鉄道模型としては、単線の周回線路が上下の立体構造で3本あります。大きなものが2つで、小さなものがひとつ。大きい2つにそれぞれ列車を別々に運転することができます。小さなものは小型の車両などを楽しむために用意しました。半径がきついので大型の車両は通れません。
 地上の線路には、多数の機関車と、4編成程度の列車を止めておき、交互に運転ができるようになっています。
 天上の線路は、行き違い等はできませんが、スイッチバックを利用して、地上の線路と列車を入れ替えることができます。

 とりあえず、これだけあれば、10年は完成しないのではないかと思います。特に、天上の線路は、地上部分との重なりが大きく、どうやって支えの柱を立てようかということすら悩んでいます。
 まずは地上部分を作っていくことにしましょう。

レイアウトのための追加購入品が届きました
一気にものが増えましたね

まだ走るところがないので、机の上を走っています

 

【次回へ続く】